この事例の依頼主
20代 男性
Zさんは、事故後時、大学生でしたが、バイク事故に遭ってしまい、左手舟状骨を骨折してしまいます。後遺障害等級10級が認定され、ある弁護士法人の弁護士に依頼をして裁判をしました。しかしながら、相手方が、当初話していた事故態様とはまったく異なる事故態様を主張してきたため、裁判が長期化してしまいます。その後諸々のいきさつがあり、Zさんは当該弁護士を辞め、他の弁護士を探することにします。★法律相談Zさんにこれまでの裁判資料を見せてもらったところ、相手方から出されている事故態様の主張に対して、真っ向から反論している様子が窺われました。しかしながら、ドライブレコーダーがあるケースというのは、ドライブレコーダーを見て事故態様が判断できますので、事故態様の争いで裁判が長期化するということは生じづらくなります。どうやら当初存在していたドライブレコーダーの映像を、相手方の保険会社がデータ消去したようで、現在は誰も所持していないとのことでした。事故態様を争うことは既に十分にされていましたので、ドライブレコーダーの証拠隠滅の悪質さを追及していく方針を加えることにしました。また、当初の裁判では、慰謝料額が機械的に計算されていましたが、Zさんのケースだと、証拠隠滅の事情があることに加え、退院後もギプス固定を続けながら自宅療養をしていたこと、加害者側から一切の謝罪がないこと、当初は事故の責任を認めていたにもかかわらず裁判となり責任否定に転じていて、かつ、その供述の変遷が不合理であること、手術を長期間にわたって繰り返していることなどの慰謝料増額事由が複数見つかったことから、請求額を拡張して裁判に臨むことにしました。
民事裁判(福岡地方裁判所小倉支部)これまで主だって取り上げられていなかったドライブレコーダーのデータ消去の悪質性について、東京地裁の裁判例を挙げながら追及をしました。また、当初機械的に算定されていた慰謝料について、増額のための請求拡張を行ったことから、被告側も焦りを見せ始め、これまで行われていなったカルテ分析などを始めました。そうしたところ、これまで15回程度の書面のラリーが続いていて長期化していた裁判でしたが、当職が関与後は4度の書面のラリーによって裁判所から和解案が出されることになりました。裁判所和解案では、ドライブレコーダーのデータ消去の悪質性についても触れられていて、被告主張の事故態様は採用しないことや、慰謝料増額を認めることなどが盛り込まれました。結果、約3700万円での和解が成立し、事件解決となりました。
【解決事例のポイント】① ドライブレコーダーのデータを破棄し、実際とは異なる事故態様を主張してきた相手方の主張を排斥し、過失割合で勝訴② ドライブレコーダーのデータ破棄を、証拠隠滅であると指摘して、慰謝料増額③ 退院後の自宅療養期間も慰謝料算定上は入院期間としてみるべきことなど証拠隠滅以外の事由でも慰謝料増額④ 実年収を大きく超える年収664万円の基礎収入額認定【コメント】相手方の主張に素直に応じる必要はない+慰謝料は機械的に算定するべきものではないこの裁判が長期化していた理由は、相手方の主張に素直に応じたためといえます。しかしながら、相手方の主張に素直に応じる義務はありません。このケースでいうと、相手方がどのような主張を行おうが、ドライブレコーダーの証拠隠滅をした時点で、語る資格がないのであって、ドライブレコーダーの提出をしなかったことが不利に働いた東京地方裁判所の裁判例を提出することで一気に話が進みました。また、慰謝料というのは精神的苦痛を金銭評価するという、とても難しい作業を伴うものです。入通院期間や後遺障害等級から機械的に判断だけであれば、小学生でも計算することができてしまいます。特に慰謝料増額事由がなく、機械的な慰謝料算定になじむケースもありますが、本件は、慰謝料増額事由が複数存在するケースでしたので、それらを漏れなく主張立証していくことが重要となってきます。機械的な慰謝料算定は弁護士であれば誰でもできますが、慰謝料増額の主張立証については、被害者側専門の弁護士でなければ難しい作業となります。当事務所の弁護士は、諸外国の慰謝料算定基準の研究や日本の裁判例の慰謝料算定の分析など、慰謝料請求に精通しています。慰謝料額について気になっておられる方は、無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。